生活環境影響調査に関する法令と広義の環境アセスメント

■廃棄物処理法15条3項の概要

廃棄物処理施設設置に関する法令解説の第1回の記事として、生活環境影響調査に関する条文である廃棄物処理法15条3項を取り上げてみます。私がこれまでに廃棄物処理施設に携わってきた経験の中で、廃棄物処理法の条文は本当に何度も読み返し読んできました。その中でも特に多く読んだ条文が廃棄物処理法15条です。廃棄物処理法15条というのは、産業廃棄物処理施設の設置許可について規定した条文ですので、産業廃棄物処理施設の設置のコンサルタントを続けてきた立場としては、この15条こそが最重要条文と言えます。廃棄物処理法15条は、その1項から読み応えのある規定なのですが、今回は1項ではなく3項について解説します。なお、これから「廃棄物処理施設」という用語を当然のように使用していきますが、法令上の「廃棄物処理施設」とは一般的な「廃棄物の処理施設」の概念とは異なります。廃棄物を処理する施設の全てを「廃棄物処理施設」と呼ぶわけではなく、廃棄物処理法上の要件を満たした廃棄物の処理施設のことを「廃棄物処理施設」と呼ぶのです。この辺りは、改めて最重要条文である廃棄物処理法15条1項と廃棄物処理法施行令7条を解説する機会に書いてみる予定です。今回は、廃棄物処理法15条3項を題材に、環境アセスメントについて書いてみます。

■廃棄物処理法15条3項

前項の申請書には、環境省令で定めるところにより、当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添付しなければならない。ただし、当該申請書に記載した同項第二号から第七号までに掲げる事項が、過去になされた第一項の許可に係る当該事項と同一である場合その他の環境省令で定める場合は、この限りでない。

条文に「前項の申請書」とあるのは、15条2項に規定された廃棄物処理施設設置許可申請書のことです。15条2項は設置許可申請書の記載事項について列挙しており、この15条3項は申請書の添付書類について記載した規定です。記載事項とは申請書に書くべき内容で、添付書類とは申請書とともに申請の際に提出する書類です。添付書類というと、普通は施設の設計計算書であったり、納税証明書であったり決算書などをイメージするかと思われます。これらは廃棄物処理法ではなく、廃棄物処理法施行規則11条6項に列挙されています。施行規則に定められたこれらの添付書類とは違う位置づけで法律に定められた特別な添付書類が、15条3項に定める書類なのです。そしてこの書類こそが、生活環境影響調査報告書、所謂アセス図書ということになります。

我々を含め多くの事業者が、「廃棄物処理施設の設置許可にはアセスが必要だ」という言い方をします。これは厳密には「廃棄物処理法15条3項に定める生活環境影響調査が必要だ」という意味です。生活環境影響調査は環境アセスメントの一類型を指します。広い意味の環境アセスメントのうち、廃棄物処理法に基づくものを生活環境影響調査というわけです。環境アセスメントには他に環境影響評価法に基づくいわゆる法アセス、環境影響評価条例に基づく条例アセスと呼ばれるものがあり、これら法アセス、条例アセスと比較したときに生活環境影響調査は小規模なものになることをもってミニアセスまたは生活アセスと称したりしています。

生活環境影響調査として廃棄物処理法で求められるのが、「当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査」ということになります。産業廃棄物処理施設を設置することにより、これまでの産業廃棄物処理施設がなかったときの周辺地域の生活環境に何らかの影響を及ぼすことになります。これらを調査し、予測・評価をすることが生活環境影響調査の目的です。廃棄物処理法15条3項には「周辺地域の生活環境に及ぼす影響」という概括的な表記がされています。具体的に、どのような影響を考慮しなければならないのか、これについての詳細は廃棄物処理法施行規則11条の2に定められています。

■廃棄物処理法施行規則11条の2

法第十五条第三項の書類には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

1 設置しようとする産業廃棄物処理施設の種類及び規模並びに処理する産業廃棄物の種類を勘案し、当該産業廃棄物処理施設を設置することに伴い生ずる大気質、騒音、振動、悪臭、水質又は地下水に係る事項のうち、周辺地域の生活環境に影響を及ぼすおそれがあるものとして調査を行つたもの(以下この条において「産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目」という。)
2 産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目の現況及びその把握の方法
3 当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響の程度を予測するために把握した水象、気象その他自然的条件及び人口、土地利用その他社会的条件の現況並びにその把握の方法
4 当該産業廃棄物処理施設を設置することにより予測される産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目に係る変化の程度及び当該変化の及ぶ範囲並びにその予測の方法
5 当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響の程度を分析した結果
6 大気質、騒音、振動、悪臭、水質又は地下水のうち、これらに係る事項を産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目に含めなかつたもの及びその理由
7 その他当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査に関して参考となる事項

施行規則11条の2は1項で、「産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目」として以下の項目を挙げています。

「①大気質、②騒音、③振動、④悪臭、⑤水質又は地下水」に係る事項

この列挙は、環境基準法2条3項における典型7公害(大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭)に包括されているもので、環境基本法の制度趣旨が廃棄物処理法に顕れていると考えてよいでしょう。廃棄物処理施設の設置によって、公害を引き起こしてはならない、或いは公害とみなすまでには至らなくとも、周辺住民の生活環境に影響を及ぼすおそれがあるなら、それを事業者として事前に把握し、住民との合意形成を行ない、その際には必要に応じて騒音対策の防音壁や粉塵対策の集塵装置などの環境保全措置を自主的に盛り込むことを目的としています。

これらの環境影響は、設置しようとする産業廃棄物処理施設がどのような廃棄物をどれくらいの量、どのような方法で処理するのかにより異なります。たとえば、廃プラスチック類と木くずを破砕処理する場合、大気質において考慮すべきは破砕機の稼働に伴って発生する粉塵がメインになるかもしれませんが、同じ廃プラスチック類と木くずの処理であっても焼却施設であれば、燃焼によって発生する排ガスの影響を考慮しなければなりません。破砕と焼却ではその影響範囲は、大きく異なることになるかもしれません。このように、処理施設の具体的な計画によって生活環境影響調査項目は大きく異なります。この項目の選定は、生活環境影響調査において行なわれる最初の判断です。

具体的計画をもとに、生活環境影響調査項目を選定していくことになりますが、当然のことながら、がれきの破砕機を山奥の採石場跡地に設置するのと、学校や病院も近い住宅密集地に設置するのでは、考慮すべき影響も大きく異なります。つまり、周辺地域の生活環境に与える影響を考慮するためには、まずは周辺地域の現況の把握が不可欠になります。現況とその把握の方法についての記載を求められています。

現実には生活環境影響調査において、生活環境影響調査項目を選定するにあたって、どの項目を選定するという作業よりも、むしろ一旦該当しそうな全ての項目を環境省指針に従って挙げたのちに、どの項目を項目から除外することができるかを個別に検討することになります。指針に挙げられる全ての項目を選定して調査することは「大は小を兼ねる」ことになって、環境によいことのように思えるかもしれませんが、事業者の立場からすると全てを調査項目に選定することによって、施設設置にかかる時間も費用も上乗せになるわけです。
一方、周辺に生活する住民にとっては、せっかく時間と費用をかけて事業者が生活環境影響調査を進めていくのであれば、より周辺住民が不安に思っていること、影響が大きそうな項目に限ってより深く調査をしてもらいたいわけです。せっかく環境アセスメントをするのであれば、事業者にとっても近隣住民にとっても意義のあるアセスにしなければなりません。そういう意味でも、調査項目の選定、そして除外は非常に重要なプロセスとなるわけです。そして、大気質、騒音、振動、悪臭、水質又は地下水のうち調査項目から除外する項目については、その除外理由を記載しなければなりません。

除外により、産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目は、処理施設を設置することで周辺地域の生活環境に影響を及ぼす可能性があると考えられるものに絞り込まれます。この調査項目について、変化の程度、変化の及ぶ範囲、予測の方法について明らかにしなければなりません。

上記が廃棄物処理法に基づく生活環境影響調査を規定する廃棄物処理法15条3項の概要です。ところで冒頭に、廃棄物処理施設の設置に必要な環境アセスメントは生活環境影響調査であるというような言い方をしていますが、これは少し厳密さを欠きます。廃棄物処理施設の設置に必要になることがある環境アセスメントは、以下の3種類です。

①生活環境影響調査(廃棄物処理法に基づく環境アセスメント)
②条例アセス(環境影響評価条例に基づく環境アセスメント)
③法アセス(環境影響評価法に基づく環境アセスメント)

また、例外的に法令で規定されてはいませんが、事業者が自主的に環境影響について把握することを行政指導されるケースも考えられます。

④自主アセス(法令に基づかずに事業者が自主的に行なう環境アセスメント)

当社で扱うのはやはり①が多く、ときどき②と④の案件があります。私としては、④の自主アセスを活用していくことができればより地域に貢献した廃棄物処理を可能にするものと考えています。

河野雅好

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